元運転士が解説 鉄道の信号のしくみ 閉そく・場内・出発信号機(その1)

鉄道のしくみ

今回は鉄道信号の中でも閉そく信号、場内信号、出発信号機について解説します。この三種の信号機は鉄道信号の中でも基本的なものとなりますが、仕組みを解説するにあたり、鉄道輸送の特徴、閉そくの考え方から説明していきます。

鉄道輸送の特徴

 鉄道は複数の車両を連結して一度に多くの人やモノを運ぶことができます。また、車輪とレールの摩擦が少ないため、エネルギー効率に優れた輸送システムです。

 反面、レールに案内されて走行するため障害物を避けたり、他の列車を簡単に追い抜いたりすることができません。ブレーキをかけてから停止するまでの距離も長くなります。このような特徴を持つ鉄道輸送において衝突を回避し、安全に走行する仕組みとして「閉そく」という考え方があります。

閉そくとは

 列車や車両同士の衝突を回避する方法が「閉そく」です。線路を一定の区間に区切り、一つの区間には2つ以上の列車(車両)を運転させないようにします。一区間を一列車(車両)に占有させれば衝突することはありません。この一定の区間のことを「閉そく区間」と言います。「閉そく区間」に入る列車に対して運転条件を示すために信号機が使われています。

閉そく信号機のしくみ

 停車場(駅や操車場など)と停車場の間にある閉そくの境目に設置され、閉そく区間に進入する列車に対して信号を現示する信号機を「閉そく信号機」と言います。先の閉そく区間に列車がいる場合、停止信号を現示することで先の区間に列車が侵入することを防ぎます。停止信号の手前の信号機には速度を落とすように指示をする信号が現示され、この先の停止信号に対しての注意を促します。先の区間が安全であり、速度を落とす必要がない場合は進行信号が現示されます。

場内・出発信号機のしくみ

 停車場内に進入する列車に対して信号を現示する信号機を「場内信号機」、停車場を出発する列車に対し信号を現示する信号機を「出発信号機」と言います。停車場とは駅や操車場のことを指し、場内・出発信号機はその停車場の駅長の管理下にあります。信号が現示される仕組みは閉そく信号機と同じですが、ポイントによって進路が分かれている場合、進路の開通状況も示しています。

上の図を見てください。赤い電車が場内信号機に差し掛かり、駅に進入しようとしています。1番線には青い電車が停車しているため進入することができません。そのため1番線に対しては停止信号が現示されています。ポイントは2番線側に転換して進路が開通しているため、2番線に対して進行信号が現示されています。「場内進行!〇〇駅、2番停車!」という具合に赤い電車は2番線に到着することができるのです。

 1番線停車中の青い電車に対しては直進方向に進路が開通しており、直進方向に対する出発信号が進行信号を現示しています。青い電車は「出発進行!」という具合に駅から出発できるのです。

 場内・出発信号機には同じ箇所に複数の信号機が設置されていることがよくあります。このような場合、主要な線路に対する信号機が他の信号機よりも上になるように設置されます。上の図のように1つの柱に2つの信号機が設置されている信号機を「一柱二基」(いっちゅうにき)と呼ぶこともあります。

閉そくの数え方

 閉そく信号機には閉そく信号機であることを示すために閉そく信号標識という数字の書かれた標識が設置されています。場内信号機に最も近い閉そく信号機が第1閉そく信号機となるように、進行方向から見て減数式に数字が進みます。運転士は「第3閉そく進行!」という具合に喚呼するわけです。なお、場内・出発信号機は逆に加算式となっており、第1場内、第2場内・・・の順に設置されます。

代々木駅から見た中央総武緩行線の第23閉そく信号機

 中には20閉そくを超える数字が登場する路線もあるようで、そのような路線に配属された見習い運転士は覚えるのに苦労するそうです。

まとめ

今回は鉄道輸送の特徴から閉そくの考え方、閉そく信号機、場内・出発信号機のしくみについて解説しました。次回は現示される信号の種類、信号の防護区間について解説いたします。

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