元運転士が解説 連結作業で使用される「誘導信号機」とは

鉄道のしくみ

 鉄道ではしばしば出発地の異なる2つの列車を連結したり、途中の駅で増結を行ったり、連結作業が発生します。しかし、「閉そく」の考え方の基本である1閉そく1列車が原則の下で、どのように2つの列車を連結するのでしょうか。

 今回は主に連結作業で使用される「誘導信号機」について解説します。

誘導信号機とは

 誘導信号機は以下のような説明がなされます。

 場内信号機または入換信号機に進行を指示する信号を現示してはならない時、進入する列車または車両に対し誘導信号を現示するもの。

 これだけではよくわかりませんね。駅(停車場)で列車どうしの連結を行う時を考えてみます。後から来た列車が場内信号機を超えて駅(停車場)に進入する際、先の閉そく区間には既に到着している連結相手の列車が待機しているはずです。先の閉そく区間、すなわち場内信号機の防護区間内に列車がいる以上、場内信号機に「進行を指示する信号」を現示するわけにはいきません。そのため、「誘導信号」という特別な信号を出すことで、先の閉そく区間に後からきた列車を進入させるのです。「誘導信号」の防護区間は連結相手の列車が停止しているところまでとなります。

 本来、「誘導信号機」を使用しなくても操車係による入換合図を使用すれば先の閉そく区間に列車や車両を進入させることはできます。しかし、連結作業を日ごろから頻繁に行う箇所で毎回入換合図を表示するのは不便ですので、そのような箇所には「誘導信号機」が設置されています。

誘導信号機の現示する信号の種類

 誘導信号機が現示する信号の種類は「誘導信号」のみです。「誘導信号」の現示があるとき、現示箇所をこえて進行します。先の進路上には列車または車両があることを予期して運転します。誘導信号機の定位は信号の現示をしないです。通常、信号機は消灯しています。

 白色灯2灯により現示される灯列式が一般的ですが、橙黄色(黄色)1灯により現示される色灯式の場合もあり、鉄道事業者によって使用される形状等に若干の差があるようです。

誘導信号機による運転の方法

 本線運転にて連結を行う場合を例に説明します。

 誘導信号機が併設されている場内信号機の外方に一旦停止します。外方(がいほう)とは信号機からみて現示を行っている方向のことです。

 誘導信号の現示を確認後、現示箇所をこえて進行します。進路上には連結相手となる列車が停車しているため、制限速度は低く抑えられています。(詳細な速度は鉄道事業者により異なるようです)防護区間は停車している連結相手の列車までですが、運転可能な範囲はその列車の手前、定められた位置までです。連結の際は連結相手の列車(車両)の手前に一旦手前に停止する必要があります。停止位置は駅係員の手旗によって示されることが一般的です。

連結以外で誘導信号機を使用する場合

 誘導信号機は連結以外でも使用されることがあります。同じホームに複数の列車を縦列停車させるときです。運転方法は連結時と同じく、場内信号機の外方にいったん停車した後、誘導信号の現示を確認して所定位置まで進行します。

 このような取り扱いは富山県の泊駅で実際に行われています。1つのホームに「あいの風とやま鉄道」と「えちごトキめき鉄道」の列車が縦列停車します。停止位置は停止位置目標の標識によって示されているようです。

 私はその様子を見に行ったことはないのですが、実際に見るとぶつからないとはわかっていてもドキドキしていまいそうです。是非とも一度実際に訪れて見に行ってみたいところです。

まとめ

 今回は誘導信号機について解説いたしました。誘導信号機が使用される場合や連結作業時の信号のしくみについて知っていただけたでしょうか。閉そくのしくみを知っていると、1つの閉そくに2つ以上の列車または車両をいれることができる特徴的な信号であることが理解していただけると思います。この特殊性から誘導信号機は私の好きな鉄道信号(?)のひとつとなっています。皆さんもその特殊性をかみしめながら、誘導信号機を観察していただけますと幸いです。

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