単線区間の路線に行くと稀に背板が真四角の信号機を見かけることがあります。これは遠方信号機といい、この先にある場内信号機の現示を予告する役割を持っている特殊な信号機です。今回は遠方信号機について解説します。
遠方信号機とは
場内信号機に従属している信号機であり、主体となる場内信号機の現示を予告します。場内信号機の見通しが悪い場合にその手前に設けられます。
遠方信号機は従属信号機の一種であるため防護区間をもっていません。単線区間で閉そく信号機を設けることができない閉そく方式を採用している場合において設けられることがあります。
閉そく信号機を設けることができない閉そく方式とは、停車場間を1閉そくとしているような場合です。出発信号機の次は隣の停車場の場内信号機が現れることになります。この場合、出発信号機の進行現示で出発し、次の場内信号機でいきなり停止信号が現示されることも考えられます。遠方信号機が設置されていれば、運転士は場内信号機の現示を予期して運転することができるのです。
遠方信号機の特徴
遠方信号機は従属信号機の一種であり、防護区間をもっていません。そのため現示箇所を超えて進行しても現示は変化しません。先にある場内信号機の現示変化に合わせて遠方信号の現示も変化します。
大きな特徴は信号現示に対する制限速度があることです。遠方信号機が注意信号の現示であれば、注意信号対する制限速度がかかります。この点が制限速度のない中継信号機との大きな違いとなります。
遠方信号機の現示する信号の種類
遠方信号機が現示する信号の種類は、注意信号、減速信号、進行信号の3種類です。主体となる場内信号機との現示の関係は以下のようになります。
注意信号・・・停止信号
減速信号・・・警戒信号、注意信号
進行信号・・・進行信号
主体の場内信号機よりも下位の信号現示をすることで、場内信号機の現示を予告しています。遠方信号機は停止を義務付ける信号機でないため停止信号はありません。
遠方信号機でみられる変わった光景
通常、単線区間では列車が走行してくる方向に対して逆向きに設置されている信号機は、すべて停止現示になります。しかし、遠方信号機は防護区間をもたず、場内信号機の現示を予告する信号機であるため、列車が逆向からきているにもかかわらず注意現示を示しています。この光景を見るとすこしびっくりしてしまいますが、もちろん安全上問題はありません。
まとめ
遠方信号機は場内信号機の現示を予告する信号機であり、単線区間で閉そく信号機を設けることができない場合に設置されることがあります。信号現示による速度制限がある点で中継信号機とは異なります。
単線区間で閉そく信号機が設置できない閉そく方式で活躍する信号機なので、都市部ではなかなか見かける機会がない信号機ですね。
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